小倉おぐら百人一首

歌番号
001
歌人(作者)
天智天皇
(てんじ てんのう)

あき かりほのいほ とまをあらみ わが衣手ころもで つゆにぬれつつ

読み

あきのたの かりのいの とまをあらみ わがころもでは つゆにぬれつつ

歌番号
002
歌人(作者)
持統天皇
(じとう てんのう)

はるぎて なつにけらし 白妙しろたへ ころもほすてふ あま香具山かぐやま

読み

はるすぎて なつきにけらし しろた ころもほすちょう あまのかぐやま

歌番号
003
歌人(作者)
柿本人麿
(かきのもと の ひとまろ)

あしびきの 山鳥やまどり しだり ながながし ひとりかも

読み

あしびきの やまどりのの しだり ながながしよを ひとりかもね

歌番号
004
歌人(作者)
山部赤人
(やまべ の あかひと)

田子たごうら うちでてみれば 白妙しろたへ 富士ふじ高嶺たかね ゆきりつつ

読み

たごのうらに うちいでてみれば しろた ふじのたかねに ゆきはふりつつ

歌番号
005
歌人(作者)
猿丸大夫
(さるまる だいふ)

奥山おくやま 紅葉もみぢみわけ なく鹿しか こゑくときぞ あきかなしき

読み

おくやまに もみふみわけ なくしかの きくときぞ あきはかなしき

歌番号
006
歌人(作者)
中納言家持
(ちゅうなごん やかもち)

かささぎの わたせるはし おくしも しろきをれば ぞふけにける

読み

かささぎの わたせるはしに おくしもの しろきをみれば よぞふけにける

歌番号
007
歌人(作者)
阿倍仲麻
(あべ の なかまろ)

あまはら ふりさければ 春日かすがなる 三笠みかさやま でしつきかも

読み

あまのはら ふりさけみれば かすがなる みかさのやまに いでしつきかも

歌番号
008
歌人(作者)
喜撰法師
(きせん ほうし)

わがいほ みやこのたつみ しかぞ をうぢやま ひとはいふなり

読み

わがいは みやこのたつみ しかぞすむ よをうやまと ひとはいなり

歌番号
009
歌人(作者)
小野小町
(おの の こまち)

はないろ うつりにけりな いたづらに わがにふる ながめせしまに

読み

はなのいろは うつりにけりな いたらに わがみよにふる ながめせしまに

歌番号
010
歌人(作者)
蝉丸
(せみまる)

これやこの くもかへるも わかれては るもらぬも 逢坂あふさかせき

読み

これやこの ゆくもかるも わかれては しるもしらぬも おうさかのせき

歌番号
011
歌人(作者)
参議篁
(さんぎ たかむら)

わたのはら 八十島やそしまかけて こぎでぬと ひとにはげよ あまのつりぶね

読み

わたのはら やそしまかけて こぎいでぬと ひとにはつげよ あまのつりぶね

歌番号
012
歌人(作者)
僧正遍昭
(そうじょう へんじょう)

あまかぜ くもかよ ぢよ をとめの姿すがた しばしとどめむ

読み

あまつかぜ くものかよ ふきと とめのすがた しばしとどめ

歌番号
013
歌人(作者)
陽成院
(ようぜい いん)

筑波嶺つくばね みねよりつる みなのがは こひぞつもりて ふちとなりぬる

読み

つくばねの みねよりおつる みなのが ぞつもりて ふちとなりぬる

歌番号
014
歌人(作者)
河原左大臣
(かわら の さだいじん)

陸奥みちのく しのぶもぢずり たれゆゑに みだれそめにし われならなくに

読み

みちのくの しぶもずり たれゆ みだれそめにし われならなくに

歌番号
015
歌人(作者)
光孝天皇
(こうこう てんのう)

きみがため はるでて 若菜わかなつむ わが衣手ころもで ゆきりつつ

読み

きみがため はるののにいでて わかなつむ わがころもでに ゆきはふりつつ

歌番号
016
歌人(作者)
中納言行平
(ちゅうなごん ゆきひら)

たちわか いなばのやま みねふる まつとしかば いまかへ

読み

たちわかれ いなばのやまの みねにお まつとしきかば いまかりこ

歌番号
017
歌人(作者)
在原業平朝臣
(ありわら なりひら あそん)

ちはやぶる 神代かみよかず 竜田川たつたがは からくれなゐに みづくくるとは

読み

ちはやぶる かみよもきかず たつたが からくれなに みくくるとは

歌番号
018
歌人(作者)
藤原敏行朝臣
(ふじわら の としゆき あそん)

きしによるなみ よるさへや ゆめかよ 人目ひとめよくらむ

読み

すみのえの きしによるなみ よるさ ゆめのかよ ひとめよくら

歌番号
019
歌人(作者)
伊勢
(いせ)

難波潟なにはがた みじかあし ふしの はでこの ぐしてよとや

読み

なにがた みじかきあしの ふしのまも でこのよを すぐしてよとや

歌番号
020
歌人(作者)
元良親王
(もとよし しんのう)

わびぬれば いまはたおな 難波なにはなる みをつくしても はむとぞおも

読み

わびぬれば いまはたおなじ なになる みをつくしても あとぞおも

歌番号
021
歌人(作者)
素性法師
(そせい ほうし)

いまむと いひしばかりに 長月ながつき 有明ありあけつき でつるかな

読み

いまこと いしばかりに ながつきの ありあけのつきを まちいでつるかな

歌番号
022
歌人(作者)
文屋康秀
(ふんや の やすひで)

くからに あき草木くさき しをるれば むべ山風やまかぜ あらしといふらむ

読み

ふくからに あきのくさきの しるれば むべやまかぜを あらしとい

歌番号
023
歌人(作者)
大江千里
(おおえ の ちさと)

つきれば ちぢにものこそ かなしけれ わがひとつの あきにはあらねど

読み

つきみれば ちぢにものこそ かなしけれ わがみひとつの あきにはあらねど

歌番号
024
歌人(作者)
菅家
(かんけ)

このたびは ぬさもとりあへず 手向山たむけやま 紅葉もみぢにしき かみのまにまに

読み

このたびは ぬさもとりあず たむけやま もみのにしき かみのまにまに

歌番号
025
歌人(作者)
三条右大臣
(さんじょう の うだいじん)

にしおはば 逢坂山あふさかやま さねかづら ひとられで くるよしもがな

読み

なにしおおうさかやまの さねか ひとにしられで くるよしもがな

歌番号
026
歌人(作者)
貞信公
(ていしん こう)

小倉山をぐらやま みねのもみぢ こころあらば いまひとたびの みゆきたなむ

読み

ぐらやま みねのもみば こころあらば いまひとたびの みゆきまたなむ

歌番号
027
歌人(作者)
中納言兼輔
(ちゅうなごん かねすけ)

みかのはら わきてながるる 泉川いづみがは いつきとてか こひしかるらむ

読み

みかのはら わきてながるる いみが いつみきとてか こしかるら

歌番号
028
歌人(作者)
源宗于朝臣
(みなもと の むねゆき あそん)

山里やまざと ふゆぞさびしさ まさりける 人目ひとめくさ かれぬとおもへば

読み

やまざとは ふゆぞさびしさ まさりける ひとめもくさも かれぬとおも

歌番号
029
歌人(作者)
凡河内躬恒
(おおしこうち の みつね)

こころあてに らばやらむ 初霜はつしも きまどはせる 白菊しらぎくはな

読み

こころあてに らばや はつしもの おきまどせる しらぎくのはな

歌番号
030
歌人(作者)
壬生忠岑
(みぶ の ただみね)

有明ありあけ つれなくえし わかれより あかつきばかり きものはなし

読み

ありあけの つれなくみえし わかれより あかつきばかり うきものはなし

歌番号
031
歌人(作者)
坂上是則
(さかのうえ の これのり)

あさぼらけ 有明ありあけつき るまでに 吉野よしのさと れる白雪しらゆき

読み

あさぼらけ ありあけのつきと みるまでに よしののさとに ふれるしらゆき

歌番号
032
歌人(作者)
春道列樹
(はるみち の つらき)

やまがはに かぜのかけたる しがらみは ながれもあへぬ 紅葉もみぢなりけり

読み

やまがに かぜのかけたる しがらみは ながれもあぬ もみなりけり

歌番号
033
歌人(作者)
紀友則
(き の とものり)

ひさかたの ひかりのどけき はる しづこころなく はなるらむ

読み

ひさかたの ひかりのどけき はるのひに こころなく はなのちるら

歌番号
034
歌人(作者)
藤原興風
(ふじわら の おきかぜ)

たれをかも ひとにせむ 高砂たかさご まつむかし ともならなくに

読み

たれをかも しるひとにせ たかさごの まつもむかしの ともならなくに

歌番号
035
歌人(作者)
紀貫之
(き の つらゆき)

ひとはいさ こころらず ふるさとは はなむかし ににほひける

読み

ひとはいさ こころもしらずふるさとは はなぞむかしの かににける

歌番号
036
歌人(作者)
清原深養父
(きよはら の ふかやぶ)

なつ まだよひながら けぬるを くものいづこに つき宿やどるらむ

読み

なつのよは まだよながら あけぬるを くものいこに つきやどるら

歌番号
037
歌人(作者)
文屋朝康
(ふんや の あさやす)

白露しらつゆ かぜきしく あき つらぬきとめぬ たまりける

読み

しらつゆに かぜのふきしく あきののは つらぬきとめぬ たまぞちりける

歌番号
038
歌人(作者)
右近
(うこん)

わすらるる をばおもはず ちかひてし ひといのち しくもあるかな

読み

わすらるる みをばおもず ちかてし ひとのいのちの しくもあるかな

歌番号
039
歌人(作者)
参議等
(さんぎ ひとし)

浅芽生あさぢふ 小野をの篠原しのはら しのぶれど あまりてなどか ひとこひしき

読み

あさののしのはら しのぶれど あまりてなどか ひとのこしき

歌番号
040
歌人(作者)
平兼盛
(たいら の かねもり)

しのぶれど いろでにけり わがこひ ものやおもふと ひとふまで

読み

しのぶれど いろにいでにけり わがこ ものやおもと ひとのとまで

歌番号
041
歌人(作者)
壬生忠見
(みぶ の ただみ)

こひすてふ わがはまだき ちにけり ひとれずこそ おもひそめしか

読み

ちょう わがなはまだき たちにけり ひとしれずこそ おもそめしか

歌番号
042
歌人(作者)
清原元輔
(きよはら の もとすけ)

ちぎりきな かたみにそで しぼりつつ すゑ松山まつやま なみこさじとは

読み

ちぎりきな かたみにそでを しぼりつつ のまつやま なみこさじとは

歌番号
043
歌人(作者)
権中納言敦忠
(ごんちゅうなごん あつただ)

ての のちこころ くらぶれば むかしもの おもはざりけり

読み

みての のちのこころに くらぶれば むかしはものを おもざりけり

歌番号
044
歌人(作者)
中納言朝忠
(ちゅうなごん あさただ)

ふことの えてしなくは なかなかに ひとをもをも うらみざらまし

読み

ー(ぅ)ことの たえてしなくは なかなかに ひとをもみをも うらみざらまし

歌番号
045
歌人(作者)
謙徳公
(けんとく こう)

あはれとも いふべきひと おもほえで のいたづらに なりぬべきかな

読み

れとも いべきひとは おもえで みのいたらに なりぬべきかな

歌番号
046
歌人(作者)
曽禰好忠
(そね の よしただ)

由良ゆら わた舟人ふなびと かぢを くへもらぬ こひみちかな

読み

ゆらのとを わたるふなびと かをたえ ゆくもしらぬ このみちかな

歌番号
047
歌人(作者)
恵慶法師
(えぎょう ほうし)

八重やへむぐら しげれる宿やど さびしきに ひとこそえね あきにけり

読み

むぐら しげれるやどの さびしさに ひとこそみえね あきはきにけり

歌番号
048
歌人(作者)
源重之
(みなもと の しげゆき)

かぜをいたみ いはうつなみ おのれのみ くだけてもの おもふころかな

読み

かぜをいたみ いうつなみの おのれのみ くだけてものを おもころかな

歌番号
049
歌人(作者)
大中臣能宣朝臣
(おおなかとみ の よしのぶ あそん)

みかきもり 衛士ゑじのたく よる ひるえつつ ものをこそおも

読み

みかきもり じのたくひの よるはもえ ひるはきえつつ ものをこそおも

歌番号
050
歌人(作者)
藤原義孝
(ふじわら の よしたか)

きみがため しからざりし いのちさへ ながくもがなと おもひけるかな

読み

きみがため しからざりし いのちさ ながくもがなと おもけるかな

歌番号
051
歌人(作者)
藤原実方朝臣
(ふじわら の さねかた あそん)

かくとだに えやはいぶきの さしもぐさ さしもらじな ゆるおもひを

読み

かくとだに えやはいぶきの さしもぐさ さしもしらじな もゆるおも

歌番号
052
歌人(作者)
藤原道信朝臣
(ふじわら の みちのぶ あそん)

けぬれば るるものとは りながら なほうらめしき あさぼらけかな

読み

あけぬれば くるるものとは しりながら うらめしき あさぼらけかな

歌番号
053
歌人(作者)
右大将通綱母
(うだいしょう みちつな の はは)

なげきつつ ひとり くる いかにひさしき ものとかは

読み

なげきつつ ひとりぬるよの あくるまは いかにひさしき ものとかはしる

歌番号
054
歌人(作者)
儀同三司母
(ぎどうさんし の はは)

わすれじの すゑまでは かたければ 今日けふかぎりの いのちともがな

読み

わすれじの ゆくすまでは かたければ きょうをかぎりの いのちともがな

歌番号
055
歌人(作者)
大納言公任
(だいなごん きんとう)

たきおと えてひさしく なりぬれど こそながれて なほこえけれ

読み

たきのおとは たえてひさしく なりぬれど なこそながれて なきこえけれ

歌番号
056
歌人(作者)
和泉式部
(いずみ しきぶ)

あらざらむ こののほかの おも いまひとたびの ふこともがな

読み

あらざら このよのほかの おもでに いまひとたびの こともがな

歌番号
057
歌人(作者)
紫式部
(むらさき しきぶ)

めぐりひて しやそれとも わかぬ くもがくれにし 夜半よはつきかな

読み

めぐりあて みしやそれとも わかぬまに くもがくれにし よのつきかな

歌番号
058
歌人(作者)
大弐三位
(だいにのさんみ)

有馬山ありまやま ゐなの笹原ささはら かぜけば いでそよひと わすれやはする

読み

ありまやま なのささはら かぜふけば いでそよひとを わすれやはする

歌番号
059
歌人(作者)
赤染衛門
(あかぞめえもん)

やすらはで なましものを 小夜さよけて かたぶくまでの つきしかな

読み

やすらで ねなましものを さよふけて かたぶくまでの つきをみしかな

歌番号
060
歌人(作者)
小式部内侍
(こしきぶ の ないし)

大江山おほえやま いくみち とほければ まだふみも あま橋立はしだて

読み

えやま いくののみちの とければ まだふみもみず あまのはしだて

歌番号
061
歌人(作者)
伊勢大輔
(いせ の たいふ)

いにしへの 奈良ならみやこ 八重桜やへざくら けふ九重ここのへ にほひぬるかな

読み

いにしの ならのみやこの やざくら きょうここのに にぬるかな

歌番号
062
歌人(作者)
清少納言
(せい しょうなごん)

をこめて とり空音そらね はかるとも よに逢坂あふさか せきはゆるさじ

読み

よをこめて とりのそらねは はかるとも よにおうさかの せきはゆるさじ

歌番号
063
歌人(作者)
左京大夫道雅
(さきょうだいぶ みちまさ)

いまはただ おもえなむ とばかりを ひとづてならで ふよしもがな

読み

いまはただ おもたえな とばかりを ひとづてならで いよしもがな

歌番号
064
歌人(作者)
権中納言定頼
(ごんちゅうなごん さだより)

あさぼらけ 宇治うぢ川霧かはぎり たえだえに あらはれわたる 瀬々せぜ網代木あじろぎ

読み

あさぼらけ うのかぎり たえだえに あられわたる せぜのあじろぎ

歌番号
065
歌人(作者)
相模
(さがみ)

うらみわび ほさぬそでだに あるものを こひちなむ こそしけれ

読み

うらみわび ほさぬそでだに あるものを にくちな なこそしけれ

歌番号
066
歌人(作者)
前大僧正行尊
(さきの だいそうじょう ぎょうそん)

もろともに あはれとおも 山桜やまざくら はなよりほかに ひともなし

読み

もろともに あれとおも やまざくら はなよりほかに しるひともなし

歌番号
067
歌人(作者)
周防内侍
(すおう の ないし)

はる ゆめばかりなる 手枕たまくら かひなくたむ こそしけれ

読み

はるのよの ゆめばかりなる たまくらに なくたた なこそしけれ

歌番号
068
歌人(作者)
三条院
(さんじょう いん)

こころにも あらでうき ながらへば こひしかるべき 夜半よはつきかな

読み

こころにも あらでうきよに ながら しかるべき よのつきかな

歌番号
069
歌人(作者)
能因法師
(のういん ほうし)

あらし 三室みむろやま もみぢ 竜田たつたかは にしきなりけり

読み

あらしふく みむろのやまの もみばは たつたのかの にしきなりけり

歌番号
070
歌人(作者)
良暹法師
(りょうぜん ほうし)

さびしさに 宿やどでて ながむれば いづこもおな あきゆふ

読み

さびしさに やどをたちいでて ながむれば こもおなじ あきのゆぐれ

歌番号
071
歌人(作者)
大納言経信
(だいなごん つねのぶ)

ゆふされば 門田かどた稲葉いなば おとづれて あしのまろやに 秋風あきかぜ

読み

されば かどたのいなば おとれて あしのまろやに あきかぜぞふく

歌番号
072
歌人(作者)
祐子内親王家紀伊
(ゆうしないしんのうけ の きい)

おと 高師たかしはま あだなみ かけじやそで ぬれもこそすれ

読み

おとにきく たかしのはまの あだなみは かけじやそでに ぬれもこそすれ

歌番号
073
歌人(作者)
権中納言匡房
(ごんちゅうなごん まさふさ)

高砂たかさご 尾上をのへさくら きにけり 外山とやまかすみ たずもあらなむ

読み

たかさごの のさくら さきにけり とやまのかすみ たたずもあらな

歌番号
074
歌人(作者)
源俊頼朝臣
(みなもと の としより あそん)

かりける ひと初瀬はつせ やまおろしよ はげしかれとは いのらぬものを

読み

うかりける ひとをはつせの やまおろし(よ) はげしかれとは いのらぬものを

歌番号
075
歌人(作者)
藤原基俊
(ふじわら の もととし)

ちぎりおきし させもがつゆ いのちにて あはれ今年ことし あきもいぬめり

読み

ちぎりおきし させもがつゆを いのちにて れことしの あきもいぬめり

歌番号
076
歌人(作者)
法性寺入道前関白太政大臣
(ほっしょうじ にゅうどう さきの かんぱく だいじょうだいじん)

わたのはら こぎでてれば ひさかたの 雲居くもゐにまがふ おき白波しらなみ

読み

わたのはら こぎいでてみれば ひさかたの くもにまが おきつしらなみ

歌番号
077
歌人(作者)
崇徳院
(すとく いん)

をはやみ いはにせかるる 滝川たきがは われてもすゑ はむとぞおも

読み

せをはやみ いにせかるる たきが われてもすに あとぞおも

歌番号
078
歌人(作者)
源兼昌
(みなもと の かねまさ)

淡路島あはぢしま かよふ千鳥ちどり こゑ いくめぬ 須磨すま関守せきもり

読み

しま かよちどりの なくこ いくよねざめぬ すまのせきもり

歌番号
079
歌人(作者)
左京大夫顕輔
(さきょうだいぶ あきすけ)

秋風あきがぜ たなびくくも より もれづるつき かげのさやけさ

読み

あきがぜに たなびくくもの たえまより もれいるつきの かげのさやけさ

歌番号
080
歌人(作者)
待賢門院堀河
(たいけんもんいん の ほりかわ)

ながからむ こころらず 黒髪くろかみ みだれて今朝けさ ものをこそおも

読み

ながから こころもしらず くろかみの みだれてけさは ものをこそおも

歌番号
081
歌人(作者)
後徳大寺左大臣
(ごとくだいじ の さだいじん)

ほとどぎす きつるかた ながむれば ただ有明ありあけ つきのこれる

読み

ほととぎす なきつるかたを ながむれば ただありあけの つきぞのこれる

歌番号
082
歌人(作者)
道因法師
(どういん ほうし)

おもひわび さてもいのち あるものを きにたへぬは なみだなりけり

読み

おもわび さてもいのちは あるものを うきにたぬは なみだなりけり

歌番号
083
歌人(作者)
皇太后宮大夫俊成
(こうたいごうぐうのだいぶ しゅんぜい)

なか みちこそなけれ おも やまおくにも 鹿しかくなる

読み

よのなかよ みちこそなけれ おもいる やまのおくにも しかぞなくなる

歌番号
084
歌人(作者)
藤原清輔朝臣
(ふじわら の きよすけ あそん)

ながらへば またこのごろや しのばれむ しと いまこひしき

読み

ながらば またこのごろや しのばれ うしとみしよぞ いまはこしき

歌番号
085
歌人(作者)
俊恵法師
(しゅんえ ほうし)

もすがら ものおもふころは けやらで ねやのひまさへ つれなかりけり

読み

よもすがら ものおもころは あけやらで ねやのひまさ つれなかりけり

歌番号
086
歌人(作者)
西行法師
(さいぎょう ほうし)

なげけとて つきやはもの おもはする かこちがほなる わがなみだかな

読み

なげけとて つきやはものを おもする かこちがなる わがなみだかな

歌番号
087
歌人(作者)
寂蓮法師
(じゃくれん ほうし)

村雨むらさめ つゆもまだひぬ まきの きりちのぼる あきゆふ

読み

むらさめの つゆもまだひぬ まきのはに きりたちのぼる あきのゆぐれ

歌番号
088
歌人(作者)
皇嘉門院別当
(こうかもんいん の べっとう)

難波江なにはえ あしのかりねの ひとよゆゑ みをつくしてや ひわたるべき

読み

なにえの あしのかりねの ひとよゆ みをつくしてや こわたるべき

歌番号
089
歌人(作者)
式子内親王
(しょくし ないしんのう)

たま えなばえね ながらへば しのぶることの よはりもぞする

読み

たまのよ たえなばたえね ながら しのぶることの よりもぞする

歌番号
090
歌人(作者)
殷富門院大輔
(いんぷもんいん の たいふ)

せばやな 雄島をじまのあまの そでだにも ぬれにぞぬれし いろはかはらず

読み

みせばやな じまのあまの そでだにも ぬれにぞぬれし いろはからず

歌番号
091
歌人(作者)
後京極摂政前太政大臣
(ごきょうごくせっしょう さきの だいじょうだいじん)

きりぎりす くや霜夜しもよ さむしろに ころもかたしき ひとりかも

読み

きりぎりす なくやしもよの さむしろに ころもかたしき ひとりかもね

歌番号
092
歌人(作者)
二条院讃岐
(にじょういん の さぬき)

わがそで 潮干しほひえぬ おきいし ひとこそらね かわもなし

読み

わがそでは しひにみえぬ おきのいしの ひとこそしらね かわくまもなし

歌番号
093
歌人(作者)
鎌倉右大臣
(かまくら の うだいじん)

なか つねにもがもな なぎさこぐ あまの小舟をぶね 綱手つなでかなしも

読み

よのなかは つねにもがもな なぎさこぐ あまのぶねの つなでかなしも

歌番号
094
歌人(作者)
参議雅経
(さんぎ まさつね)

吉野よしの やま秋風あきかぜ 小夜さよけて ふるさとさむ ころもうつなり

読み

みよしのの やまのあきかぜ さよふけて ふるさとさむく ころもうつなり

歌番号
095
歌人(作者)
前大僧正慈円
(さきの だいそうじょう じえん)

おほけなく うきたみ おほふかな わがたつそま 墨染すみぞめそで

読み

けなく うきよのたみに おかな わがたつそまに すみぞめのそで

歌番号
096
歌人(作者)
入道前太政大臣
(にゅうどう さきの だいじょうだいじん)

はなさそふ あらしには ゆきならで ふりゆくものは わがなりけり

読み

はなさそ あらしのにの ゆきならで ふりゆくものは わがみなりけり

歌番号
097
歌人(作者)
権中納言定家
(ごんちゅうなごん ていか)

ひと 松帆まつほうら ゆふなぎに くや藻塩もしほ もこがれつつ

読み

こぬひとを まつほのうらの ゆなぎに やくやもしの みもこがれつつ

歌番号
098
歌人(作者)
従二位家隆
(じゅにい いえたか)

かぜそよぐ ならの小川をがは ゆふれは みそぎぞなつ しるしなりける

読み

かぜそよぐ ならのの ゆぐれは みそぎぞなつの しるしなりける

歌番号
099
歌人(作者)
後鳥羽院
(ごとば いん)

ひともをし ひともうらめし あぢきなく おもふゆゑに ものおも

読み

ひともし ひともうらめし あきなく よをおもに ものおもみは

歌番号
100
歌人(作者)
順徳院
(じゅんとく いん)

ももしきや ふる軒端のきば しのぶにも なほあまりある むかしなりけり

読み

ももしきや ふるきのきばの しのぶにも あまりある むかしなりけり