小倉(おぐら)百人一首

歌番号
001
歌人(作者)
天智天皇
(てんじ てんのう)

秋(あき)の田(た)の かりほの庵(いほ)の 苫(とま)をあらみ わが衣手(ころもで)は 露(つゆ)にぬれつつ

読み

あきのたの かりおのいおの とまをあらみ わがころもでは つゆにぬれつつ

歌番号
002
歌人(作者)
持統天皇
(じとう てんのう)

春(はる)過(す)ぎて 夏(なつ)来(き)にけらし 白妙(しろたへ)の 衣(ころも)ほすてふ 天(あま)の香具山(かぐやま)

読み

はるすぎて なつきにけらし しろたえの ころもほすちょう あまのかぐやま

歌番号
003
歌人(作者)
柿本人麿
(かきのもと の ひとまろ)

あしびきの 山鳥(やまどり)の尾(を)の しだり尾(を)の ながながし夜(よ)を ひとりかも寝(ね)む

読み

あしびきの やまどりのおの しだりおの ながながしよを ひとりかもねん

歌番号
004
歌人(作者)
山部赤人
(やまべ の あかひと)

田子(たご)の浦(うら)に うち出(い)でてみれば 白妙(しろたへ)の 富士(ふじ)の高嶺(たかね)に 雪(ゆき)は降(ふ)りつつ

読み

たごのうらに うちいでてみれば しろたえの ふじのたかねに ゆきはふりつつ

歌番号
005
歌人(作者)
猿丸大夫
(さるまる だいふ)

奥山(おくやま)に 紅葉(もみぢ)踏(ふ)みわけ 鳴(なく)く鹿(しか)の 声(こゑ)聞(き)くときぞ 秋(あき)は悲(かな)しき

読み

おくやまに もみじふみわけ なくしかの こえきくときぞ あきはかなしき

歌番号
006
歌人(作者)
中納言家持
(ちゅうなごん やかもち)

かささぎの 渡(わた)せる橋(はし)に おく霜(しも)の 白(しろ)きを見(み)れば 夜(よ)ぞふけにける

読み

かささぎの わたせるはしに おくしもの しろきをみれば よぞふけにける

歌番号
007
歌人(作者)
阿倍仲麻
(あべ の なかまろ)

天(あま)の原(はら) ふりさけ見(み)れば 春日(かすが)なる 三笠(みかさ)の山(やま)に 出(い)でし月(つき)かも

読み

あまのはら ふりさけみれば かすがなる みかさのやまに いでしつきかも

歌番号
008
歌人(作者)
喜撰法師
(きせん ほうし)

わが庵(いほ)は 都(みやこ)のたつみ しかぞ住(す)む 世(よ)をうぢ山(やま)と 人(ひと)はいふなり

読み

わがいおは みやこのたつみ しかぞすむ よをうじやまと ひとはいうなり

歌番号
009
歌人(作者)
小野小町
(おの の こまち)

花(はな)の色(いろ)は うつりにけりな いたづらに わが身(み)世(よ)にふる ながめせしまに

読み

はなのいろは うつりにけりな いたずらに わがみよにふる ながめせしまに

歌番号
010
歌人(作者)
蝉丸
(せみまる)

これやこの 行(ゆ)くも帰(かへ)るも 別(わか)れては 知(し)るも知(し)らぬも 逢坂(あふさか)の関(せき)

読み

これやこの ゆくもかえるも わかれては しるもしらぬも おうさかのせき

歌番号
011
歌人(作者)
参議篁
(さんぎ たかむら)

わたの原(はら) 八十島(やそしま)かけて こぎ出(い)でぬと 人(ひと)には告(つ)げよ あまのつり舟(ぶね)

読み

わたのはら やそしまかけて こぎいでぬと ひとにはつげよ あまのつりぶね

歌番号
012
歌人(作者)
僧正遍昭
(そうじょう へんじょう)

天(あま)つ風(かぜ) 雲(くも)の通(かよ)ひ路(ぢ) 吹(ふ)き閉(と)ぢよ をとめの姿(すがた) しばしとどめむ

読み

あまつかぜ くものかよいじ ふきとじよ おとめのすがた しばしとどめん

歌番号
013
歌人(作者)
陽成院
(ようぜい いん)

筑波嶺(つくばね)の 峰(みね)より落(お)つる みなの川(がは) 恋(こひ)ぞつもりて ふちとなりぬる

読み

つくばねの みねよりおつる みなのがわ こいぞつもりて ふちとなりぬる

歌番号
014
歌人(作者)
河原左大臣
(かわら の さだいじん)

陸奥(みちのく)の しのぶもぢずり 誰(たれ)ゆゑに 乱(みだ)れそめにし 我(われ)ならなくに

読み

みちのくの しぶもじずり たれゆえに みだれそめにし われならなくに

歌番号
015
歌人(作者)
光孝天皇
(こうこう てんのう)

君(きみ)がため 春(はる)の野(の)に出(い)でて 若菜(わかな)つむ わが衣手(ころもで)に 雪(ゆき)は降(ふ)りつつ

読み

きみがため はるののにいでて わかなつむ わがころもでに ゆきはふりつつ

歌番号
016
歌人(作者)
中納言行平
(ちゅうなごん ゆきひら)

たち別(わか)れ いなばの山(やま)の 峰(みね)に生(お)ふる まつとし聞(き)かば いま帰(かへ)り来(こ)む

読み

たちわかれ いなばのやまの みねにおうる まつとしきかば いまかえりこん

歌番号
017
歌人(作者)
在原業平朝臣
(ありわら なりひら あそん)

ちはやぶる 神代(かみよ)も聞(き)かず 竜田川(たつたがは) からくれなゐに 水(みづ)くくるとは

読み

ちはやぶる かみよもきかず たつたがわ からくれないに みずくくるとは

歌番号
018
歌人(作者)
藤原敏行朝臣
(ふじわら の としゆき あそん)

住(す)の江(え)の 岸(きし)による波(なみ) よるさへや 夢(ゆめ)の通(かよ)ひ路(ぢ) 人目(ひとめ)よくらむ

読み

すみのえの きしによるなみ よるさえや ゆめのかよいじ ひとめよくらん

歌番号
019
歌人(作者)
伊勢
(いせ)

難波潟(なにはがた) 短(みじか)き芦(あし)の ふしの間(ま)も 逢(あ)はでこの世(よ)を 過(す)ぐしてよとや

読み

なにわがた みじかきあしの ふしのまも あわでこのよを すぐしてよとや

歌番号
020
歌人(作者)
元良親王
(もとよし しんのう)

わびぬれば 今(いま)はた同(おな)じ 難波(なには)なる みをつくしても 逢(あ)はむとぞ思(おも)ふ

読み

わびぬれば いまはたおなじ なにわなる みをつくしても あわんとぞおもう

歌番号
021
歌人(作者)
素性法師
(そせい ほうし)

今(いま)来(こ)むと いひしばかりに 長月(ながつき)の 有明(ありあけ)の月(つき)を 待(ま)ち出(い)でつるかな

読み

いまこんと いいしばかりに ながつきの ありあけのつきを まちいでつるかな

歌番号
022
歌人(作者)
文屋康秀
(ふんや の やすひで)

吹(ふ)くからに 秋(あき)の草木(くさき)の しをるれば むべ山風(やまかぜ)を 嵐(あらし)といふらむ

読み

ふくからに あきのくさきの しおるれば むべやまかぜを あらしというらん

歌番号
023
歌人(作者)
大江千里
(おおえ の ちさと)

月(つき)見(み)れば ちぢに物(もの)こそ 悲(かな)しけれ わが身(み)ひとつの 秋(あき)にはあらねど

読み

つきみれば ちぢにものこそ かなしけれ わがみひとつの あきにはあらねど

歌番号
024
歌人(作者)
菅家
(かんけ)

このたびは 幣(ぬさ)もとりあへず 手向山(たむけやま) 紅葉(もみぢ)の錦(にしき) 神(かみ)のまにまに

読み

このたびは ぬさもとりあえず たむけやま もみじのにしき かみのまにまに

歌番号
025
歌人(作者)
三条右大臣
(さんじょう の うだいじん)

名(な)にしおはば 逢坂山(あふさかやま)の さねかづら 人(ひと)に知(し)られで くるよしもがな

読み

なにしおわば おうさかやまの さねかずら ひとにしられで くるよしもがな

歌番号
026
歌人(作者)
貞信公
(ていしん こう)

小倉山(をぐらやま) 峰(みね)のもみぢ葉(ば) 心(こころ)あらば 今(いま)ひとたびの みゆき待(ま)たなむ

読み

おぐらやま みねのもみじば こころあらば いまひとたびの みゆきまたなむ

歌番号
027
歌人(作者)
中納言兼輔
(ちゅうなごん かねすけ)

みかの原(はら) わきて流(なが)るる 泉川(いづみがは) いつ見(み)きとてか 恋(こひ)しかるらむ

読み

みかのはら わきてながるる いずみがわ いつみきとてか こいしかるらん

歌番号
028
歌人(作者)
源宗于朝臣
(みなもと の むねゆき あそん)

山里(やまざと)は 冬(ふゆ)ぞさびしさ まさりける 人目(ひとめ)も草(くさ)も かれぬと思(おも)へば

読み

やまざとは ふゆぞさびしさ まさりける ひとめもくさも かれぬとおもえば

歌番号
029
歌人(作者)
凡河内躬恒
(おおしこうち の みつね)

心(こころ)あてに 折(を)らばや折(を)らむ 初霜(はつしも)の 置(お)きまどはせる 白菊(しらぎく)の花(はな)

読み

こころあてに おらばやおらん はつしもの おきまどわせる しらぎくのはな

歌番号
030
歌人(作者)
壬生忠岑
(みぶ の ただみね)

有明(ありあけ)の つれなく見(み)えし 別(わか)れより 暁(あかつき)ばかり 憂(う)きものはなし

読み

ありあけの つれなくみえし わかれより あかつきばかり うきものはなし

歌番号
031
歌人(作者)
坂上是則
(さかのうえ の これのり)

朝(あさ)ぼらけ 有明(ありあけ)の月(つき)と 見(み)るまでに 吉野(よしの)の里(さと)に 降(ふ)れる白雪(しらゆき)

読み

あさぼらけ ありあけのつきと みるまでに よしののさとに ふれるしらゆき

歌番号
032
歌人(作者)
春道列樹
(はるみち の つらき)

山(やま)がはに 風(かぜ)のかけたる しがらみは 流(なが)れもあへぬ 紅葉(もみぢ)なりけり

読み

やまがわに かぜのかけたる しがらみは ながれもあえぬ もみじなりけり

歌番号
033
歌人(作者)
紀友則
(き の とものり)

ひさかたの 光(ひかり)のどけき 春(はる)の日(ひ)に しづ心(こころ)なく 花(はな)の散(ち)るらむ

読み

ひさかたの ひかりのどけき はるのひに しずこころなく はなのちるらん

歌番号
034
歌人(作者)
藤原興風
(ふじわら の おきかぜ)

誰(たれ)をかも 知(し)る人(ひと)にせむ 高砂(たかさご)の 松(まつ)も昔(むかし)の 友(とも)ならなくに

読み

たれをかも しるひとにせん たかさごの まつもむかしの ともならなくに

歌番号
035
歌人(作者)
紀貫之
(き の つらゆき)

人(ひと)はいさ 心(こころ)も知(し)らず ふるさとは 花(はな)ぞ昔(むかし)の 香(か)ににほひける

読み

ひとはいさ こころもしらずふるさとは はなぞむかしの かににおいける

歌番号
036
歌人(作者)
清原深養父
(きよはら の ふかやぶ)

夏(なつ)の夜(よ)は まだ宵(よひ)ながら 明(あ)けぬるを 雲(くも)のいづこに 月(つき)宿(やど)るらむ

読み

なつのよは まだよいながら あけぬるを くものいずこに つきやどるらん

歌番号
037
歌人(作者)
文屋朝康
(ふんや の あさやす)

白露(しらつゆ)に 風(かぜ)の吹(ふ)きしく 秋(あき)の野(の)は つらぬきとめぬ 玉(たま)ぞ散(ち)りける

読み

しらつゆに かぜのふきしく あきののは つらぬきとめぬ たまぞちりける

歌番号
038
歌人(作者)
右近
(うこん)

忘(わす)らるる 身(み)をば思(おも)はず 誓(ちか)ひてし 人(ひと)の命(いのち)の 惜(を)しくもあるかな

読み

わすらるる みをばおもわず ちかいてし ひとのいのちの おしくもあるかな

歌番号
039
歌人(作者)
参議等
(さんぎ ひとし)

浅芽生(あさぢふ)の 小野(をの)の篠原(しのはら) 忍(しの)ぶれど あまりてなどか 人(ひと)の恋(こひ)しき

読み

あさじうの おののしのはら しのぶれど あまりてなどか ひとのこいしき

歌番号
040
歌人(作者)
平兼盛
(たいら の かねもり)

忍(しの)ぶれど 色(いろ)に出(い)でにけり わが恋(こひ)は ものや思(おも)ふと 人(ひと)の問(と)ふまで

読み

しのぶれど いろにいでにけり わがこいは ものやおもうと ひとのとうまで

歌番号
041
歌人(作者)
壬生忠見
(みぶ の ただみ)

恋(こひ)すてふ わが名(な)はまだき 立(た)ちにけり 人(ひと)知(し)れずこそ 思(おも)ひそめしか

読み

こいすちょう わがなはまだき たちにけり ひとしれずこそ おもいそめしか

歌番号
042
歌人(作者)
清原元輔
(きよはら の もとすけ)

契(ちぎ)りきな かたみに袖(そで)を しぼりつつ 末(すゑ)の松山(まつやま) 波(なみ)こさじとは

読み

ちぎりきな かたみにそでを しぼりつつ すえのまつやま なみこさじとは

歌番号
043
歌人(作者)
権中納言敦忠
(ごんちゅうなごん あつただ)

逢(あ)ひ見(み)ての 後(のち)の心(こころ)に くらぶれば 昔(むかし)は物(もの)を 思(おも)はざりけり

読み

あいみての のちのこころに くらぶれば むかしはものを おもわざりけり

歌番号
044
歌人(作者)
中納言朝忠
(ちゅうなごん あさただ)

逢(あ)ふことの 絶(た)えてしなくは なかなかに 人(ひと)をも身(み)をも 恨(うら)みざらまし

読み

おー(ぅ)ことの たえてしなくは なかなかに ひとをもみをも うらみざらまし

歌番号
045
歌人(作者)
謙徳公
(けんとく こう)

あはれとも いふべき人(ひと)は 思(おも)ほえで 身(み)のいたづらに なりぬべきかな

読み

あわれとも いうべきひとは おもおえで みのいたずらに なりぬべきかな

歌番号
046
歌人(作者)
曽禰好忠
(そね の よしただ)

由良(ゆら)の門(と)を 渡(わた)る舟人(ふなびと) かぢを絶(た)え 行(ゆ)くへも知(し)らぬ 恋(こひ)の道(みち)かな

読み

ゆらのとを わたるふなびと かじをたえ ゆくえもしらぬ こいのみちかな

歌番号
047
歌人(作者)
恵慶法師
(えぎょう ほうし)

八重(やへ)むぐら しげれる宿(やど)の さびしきに 人(ひと)こそ見(み)えね 秋(あき)は来(き)にけり

読み

やえむぐら しげれるやどの さびしさに ひとこそみえね あきはきにけり

歌番号
048
歌人(作者)
源重之
(みなもと の しげゆき)

風(かぜ)をいたみ 岩(いは)うつ波(なみ)の おのれのみ くだけて物(もの)を 思(おも)ふころかな

読み

かぜをいたみ いわうつなみの おのれのみ くだけてものを おもうころかな

歌番号
049
歌人(作者)
大中臣能宣朝臣
(おおなかとみ の よしのぶ あそん)

みかき守(もり) 衛士(ゑじ)のたく火(ひ)の 夜(よる)は燃(も)え 昼(ひる)は消(き)えつつ ものをこそ思(おも)へ

読み

みかきもり えじのたくひの よるはもえ ひるはきえつつ ものをこそおもえ

歌番号
050
歌人(作者)
藤原義孝
(ふじわら の よしたか)

君(きみ)がため 惜(を)しからざりし 命(いのち)さへ 長(なが)くもがなと 思(おも)ひけるかな

読み

きみがため おしからざりし いのちさえ ながくもがなと おもいけるかな

歌番号
051
歌人(作者)
藤原実方朝臣
(ふじわら の さねかた あそん)

かくとだに えやはいぶきの さしも草(ぐさ) さしも知(し)らじな 燃(も)ゆる思(おも)ひを

読み

かくとだに えやはいぶきの さしもぐさ さしもしらじな もゆるおもいを

歌番号
052
歌人(作者)
藤原道信朝臣
(ふじわら の みちのぶ あそん)

明(あ)けぬれば 暮(く)るるものとは 知(し)りながら なほ恨(うら)めしき 朝(あさ)ぼらけかな

読み

あけぬれば くるるものとは しりながら なおうらめしき あさぼらけかな

歌番号
053
歌人(作者)
右大将通綱母
(うだいしょう みちつな の はは)

嘆(なげ)きつつ ひとり寝(ぬ)る夜(よ)の 明(あ)くる間(ま)は いかに久(ひさ)しき ものとかは知(し)る

読み

なげきつつ ひとりぬるよの あくるまは いかにひさしき ものとかはしる

歌番号
054
歌人(作者)
儀同三司母
(ぎどうさんし の はは)

忘(わす)れじの 行(ゆ)く末(すゑ)までは かたければ 今日(けふ)を限(かぎ)りの 命(いのち)ともがな

読み

わすれじの ゆくすえまでは かたければ きょうをかぎりの いのちともがな

歌番号
055
歌人(作者)
大納言公任
(だいなごん きんとう)

滝(たき)の音(おと)は 絶(た)えて久(ひさ)しく なりぬれど 名(な)こそ流(なが)れて なほ聞(き)こえけれ

読み

たきのおとは たえてひさしく なりぬれど なこそながれて なおきこえけれ

歌番号
056
歌人(作者)
和泉式部
(いずみ しきぶ)

あらざらむ この世(よ)のほかの 思(おも)ひ出(で)に 今(いま)ひとたびの 逢(あ)ふこともがな

読み

あらざらん このよのほかの おもいでに いまひとたびの おうこともがな

歌番号
057
歌人(作者)
紫式部
(むらさき しきぶ)

めぐり逢(あ)ひて 見(み)しやそれとも わかぬ間(ま)に 雲(くも)隠(がく)れにし 夜半(よは)の月(つき)かな

読み

めぐりあいて みしやそれとも わかぬまに くもがくれにし よわのつきかな

歌番号
058
歌人(作者)
大弐三位
(だいにのさんみ)

有馬山(ありまやま) ゐなの笹原(ささはら) 風(かぜ)吹(ふ)けば いでそよ人(ひと)を 忘(わす)れやはする

読み

ありまやま いなのささはら かぜふけば いでそよひとを わすれやはする

歌番号
059
歌人(作者)
赤染衛門
(あかぞめえもん)

やすらはで 寝(ね)なましものを 小夜(さよ)更(ふ)けて かたぶくまでの 月(つき)を見(み)しかな

読み

やすらわで ねなましものを さよふけて かたぶくまでの つきをみしかな

歌番号
060
歌人(作者)
小式部内侍
(こしきぶ の ないし)

大江山(おほえやま) いく野(の)の道(みち)の 遠(とほ)ければ まだふみも見(み)ず 天(あま)の橋立(はしだて)

読み

おおえやま いくののみちの とおければ まだふみもみず あまのはしだて

歌番号
061
歌人(作者)
伊勢大輔
(いせ の たいふ)

いにしへの 奈良(なら)の都(みやこ)の 八重桜(やへざくら) けふ九重(ここのへ)に にほひぬるかな

読み

いにしえの ならのみやこの やえざくら きょうここのえに においぬるかな

歌番号
062
歌人(作者)
清少納言
(せい しょうなごん)

夜(よ)をこめて 鳥(とり)の空音(そらね)は はかるとも よに逢坂(あふさか)の 関(せき)はゆるさじ

読み

よをこめて とりのそらねは はかるとも よにおうさかの せきはゆるさじ

歌番号
063
歌人(作者)
左京大夫道雅
(さきょうだいぶ みちまさ)

今(いま)はただ 思(おも)ひ絶(た)えなむ とばかりを 人(ひと)づてならで 言(い)ふよしもがな

読み

いまはただ おもいたえなん とばかりを ひとづてならで いうよしもがな

歌番号
064
歌人(作者)
権中納言定頼
(ごんちゅうなごん さだより)

朝(あさ)ぼらけ 宇治(うぢ)の川霧(かはぎり) たえだえに あらはれわたる 瀬々(せぜ)の網代木(あじろぎ)

読み

あさぼらけ うじのかわぎり たえだえに あらわれわたる せぜのあじろぎ

歌番号
065
歌人(作者)
相模
(さがみ)

恨(うら)みわび ほさぬ袖(そで)だに あるものを 恋(こひ)に朽(く)ちなむ 名(な)こそ惜(を)しけれ

読み

うらみわび ほさぬそでだに あるものを こいにくちなん なこそおしけれ

歌番号
066
歌人(作者)
前大僧正行尊
(さきの だいそうじょう ぎょうそん)

もろともに あはれと思(おも)へ 山桜(やまざくら) 花(はな)よりほかに 知(し)る人(ひと)もなし

読み

もろともに あわれとおもえ やまざくら はなよりほかに しるひともなし

歌番号
067
歌人(作者)
周防内侍
(すおう の ないし)

春(はる)の夜(よ)の 夢(ゆめ)ばかりなる 手枕(たまくら)に かひなく立(た)たむ 名(な)こそ惜(を)しけれ

読み

はるのよの ゆめばかりなる たまくらに かいなくたたん なこそおしけれ

歌番号
068
歌人(作者)
三条院
(さんじょう いん)

心(こころ)にも あらでうき世(よ)に ながらへば 濃(こひ)しかるべき 夜半(よは)の月(つき)かな

読み

こころにも あらでうきよに ながらえば こいしかるべき よわのつきかな

歌番号
069
歌人(作者)
能因法師
(のういん ほうし)

嵐(あらし)吹(ふ)く 三室(みむろ)の山(やま)の もみぢ葉(ば)は 竜田(たつた)の川(かは)の 錦(にしき)なりけり

読み

あらしふく みむろのやまの もみじばは たつたのかわの にしきなりけり

歌番号
070
歌人(作者)
良暹法師
(りょうぜん ほうし)

さびしさに 宿(やど)を立(た)ち出(い)でて ながむれば いづこも同(おな)じ 秋(あき)の夕(ゆふ)暮(ぐ)れ

読み

さびしさに やどをたちいでて ながむれば いずこもおなじ あきのゆうぐれ

歌番号
071
歌人(作者)
大納言経信
(だいなごん つねのぶ)

夕(ゆふ)されば 門田(かどた)の稲葉(いなば) おとづれて 芦(あし)のまろやに 秋風(あきかぜ)ぞ吹(ふ)く

読み

ゆうされば かどたのいなば おとずれて あしのまろやに あきかぜぞふく

歌番号
072
歌人(作者)
祐子内親王家紀伊
(ゆうしないしんのうけ の きい)

音(おと)に聞(き)く 高師(たかし)の浜(はま)の あだ波(なみ)は かけじや袖(そで)の ぬれもこそすれ

読み

おとにきく たかしのはまの あだなみは かけじやそでに ぬれもこそすれ

歌番号
073
歌人(作者)
権中納言匡房
(ごんちゅうなごん まさふさ)

高砂(たかさご)の 尾上(をのへ)の桜(さくら) 咲(さ)きにけり 外山(とやま)の霞(かすみ) 立(た)たずもあらなむ

読み

たかさごの おのえのさくら さきにけり とやまのかすみ たたずもあらなん

歌番号
074
歌人(作者)
源俊頼朝臣
(みなもと の としより あそん)

憂(う)かりける 人(ひと)を初瀬(はつせ)の 山(やま)おろしよ はげしかれとは 祈(いの)らぬものを

読み

うかりける ひとをはつせの やまおろし(よ) はげしかれとは いのらぬものを

歌番号
075
歌人(作者)
藤原基俊
(ふじわら の もととし)

契(ちぎ)りおきし させもが露(つゆ)を 命(いのち)にて あはれ今年(ことし)の 秋(あき)もいぬめり

読み

ちぎりおきし させもがつゆを いのちにて あわれことしの あきもいぬめり

歌番号
076
歌人(作者)
法性寺入道前関白太政大臣
(ほっしょうじ にゅうどう さきの かんぱく だいじょうだいじん)

わたの原(はら) こぎ出(い)でて見(み)れば ひさかたの 雲居(くもゐ)にまがふ 沖(おき)つ白波(しらなみ)

読み

わたのはら こぎいでてみれば ひさかたの くもいにまがう おきつしらなみ

歌番号
077
歌人(作者)
崇徳院
(すとく いん)

瀬(せ)をはやみ 岩(いは)にせかるる 滝川(たきがは)の われても末(すゑ)に 逢(あ)はむとぞ思(おも)ふ

読み

せをはやみ いわにせかるる たきがわの われてもすえに あわんとぞおもう

歌番号
078
歌人(作者)
源兼昌
(みなもと の かねまさ)

淡路島(あはぢしま) かよふ千鳥(ちどり)の 鳴(な)く声(こゑ)に いく夜(よ)寝(ね)覚(ざ)めぬ 須磨(すま)の関守(せきもり)

読み

あわじしま かようちどりの なくこえに いくよねざめぬ すまのせきもり

歌番号
079
歌人(作者)
左京大夫顕輔
(さきょうだいぶ あきすけ)

秋風(あきがぜ)に たなびく雲(くも)の 絶(た)え間(ま)より もれ出(い)づる月(つき)の 影(かげ)のさやけさ

読み

あきがぜに たなびくくもの たえまより もれいずるつきの かげのさやけさ

歌番号
080
歌人(作者)
待賢門院堀河
(たいけんもんいん の ほりかわ)

長(なが)からむ 心(こころ)も知(し)らず 黒髪(くろかみ)の 乱(みだ)れて今朝(けさ)は 物(もの)をこそ思(おも)へ

読み

ながからん こころもしらず くろかみの みだれてけさは ものをこそおもえ

歌番号
081
歌人(作者)
後徳大寺左大臣
(ごとくだいじ の さだいじん)

ほとどぎす 鳴(な)きつる方(かた)を ながむれば ただ有明(ありあけ)の 月(つき)ぞ残(のこ)れる

読み

ほととぎす なきつるかたを ながむれば ただありあけの つきぞのこれる

歌番号
082
歌人(作者)
道因法師
(どういん ほうし)

思(おも)ひわび さても命(いのち)は あるものを 憂(う)きにたへぬは 涙(なみだ)なりけり

読み

おもいわび さてもいのちは あるものを うきにたえぬは なみだなりけり

歌番号
083
歌人(作者)
皇太后宮大夫俊成
(こうたいごうぐうのだいぶ しゅんぜい)

世(よ)の中(なか)よ 道(みち)こそなけれ 思(おも)ひ入(い)る 山(やま)の奥(おく)にも 鹿(しか)ぞ鳴(な)くなる

読み

よのなかよ みちこそなけれ おもいいる やまのおくにも しかぞなくなる

歌番号
084
歌人(作者)
藤原清輔朝臣
(ふじわら の きよすけ あそん)

長(なが)らへば またこのごろや しのばれむ 憂(う)しと見(み)し世(よ)ぞ 今(いま)は恋(こひ)しき

読み

ながらえば またこのごろや しのばれん うしとみしよぞ いまはこいしき

歌番号
085
歌人(作者)
俊恵法師
(しゅんえ ほうし)

夜(よ)もすがら 物(もの)思(おも)ふころは 明(あ)けやらで ねやのひまさへ つれなかりけり

読み

よもすがら ものおもうころは あけやらで ねやのひまさえ つれなかりけり

歌番号
086
歌人(作者)
西行法師
(さいぎょう ほうし)

嘆(なげ)けとて 月(つき)やは物(もの)を 思(おも)はする かこち顔(がほ)なる わが涙(なみだ)かな

読み

なげけとて つきやはものを おもわする かこちがおなる わがなみだかな

歌番号
087
歌人(作者)
寂蓮法師
(じゃくれん ほうし)

村雨(むらさめ)の 露(つゆ)もまだひぬ まきの葉(は)に 霧(きり)立(た)ちのぼる 秋(あき)の夕(ゆふ)暮(ぐ)れ

読み

むらさめの つゆもまだひぬ まきのはに きりたちのぼる あきのゆうぐれ

歌番号
088
歌人(作者)
皇嘉門院別当
(こうかもんいん の べっとう)

難波江(なにはえ)の 芦(あし)のかりねの ひとよゆゑ みをつくしてや 恋(こ)ひわたるべき

読み

なにわえの あしのかりねの ひとよゆえ みをつくしてや こいわたるべき

歌番号
089
歌人(作者)
式子内親王
(しょくし ないしんのう)

玉(たま)の緒(を)よ 絶(た)えなば絶(た)えね ながらへば しのぶることの 弱(よは)りもぞする

読み

たまのおよ たえなばたえね ながらえば しのぶることの よわりもぞする

歌番号
090
歌人(作者)
殷富門院大輔
(いんぷもんいん の たいふ)

見(み)せばやな 雄島(をじま)のあまの 袖(そで)だにも ぬれにぞぬれし 色(いろ)はかはらず

読み

みせばやな おじまのあまの そでだにも ぬれにぞぬれし いろはかわらず

歌番号
091
歌人(作者)
後京極摂政前太政大臣
(ごきょうごくせっしょう さきの だいじょうだいじん)

きりぎりす 鳴(な)くや霜夜(しもよ)の さむしろに 衣(ころも)片(かた)しき ひとりかも寝(ね)む

読み

きりぎりす なくやしもよの さむしろに ころもかたしき ひとりかもねん

歌番号
092
歌人(作者)
二条院讃岐
(にじょういん の さぬき)

わが袖(そで)は 潮干(しほひ)に見(み)えぬ 沖(おき)の石(いし)の 人(ひと)こそ知(し)らね 乾(かわ)く間(ま)もなし

読み

わがそでは しおひにみえぬ おきのいしの ひとこそしらね かわくまもなし

歌番号
093
歌人(作者)
鎌倉右大臣
(かまくら の うだいじん)

世(よ)の中(なか)は 常(つね)にもがもな 渚(なぎさ)こぐ あまの小舟(をぶね)の 綱手(つなで)かなしも

読み

よのなかは つねにもがもな なぎさこぐ あまのおぶねの つなでかなしも

歌番号
094
歌人(作者)
参議雅経
(さんぎ まさつね)

み吉野(よしの)の 山(やま)の秋風(あきかぜ) 小夜(さよ)更(ふ)けて ふるさと寒(さむ)く 衣(ころも)うつなり

読み

みよしのの やまのあきかぜ さよふけて ふるさとさむく ころもうつなり

歌番号
095
歌人(作者)
前大僧正慈円
(さきの だいそうじょう じえん)

おほけなく うき世(よ)の民(たみ)に おほふかな わがたつ杣(そま)に 墨染(すみぞめ)の袖(そで)

読み

おおけなく うきよのたみに おおうかな わがたつそまに すみぞめのそで

歌番号
096
歌人(作者)
入道前太政大臣
(にゅうどう さきの だいじょうだいじん)

花(はな)さそふ 嵐(あらし)の庭(には)の 雪(ゆき)ならで ふりゆくものは わが身(み)なりけり

読み

はなさそう あらしのにわの ゆきならで ふりゆくものは わがみなりけり

歌番号
097
歌人(作者)
権中納言定家
(ごんちゅうなごん ていか)

来(こ)ぬ人(ひと)を 松帆(まつほ)の浦(うら)の 夕(ゆふ)なぎに 焼(や)くや藻塩(もしほ)の 身(み)もこがれつつ

読み

こぬひとを まつほのうらの ゆうなぎに やくやもしおの みもこがれつつ

歌番号
098
歌人(作者)
従二位家隆
(じゅにい いえたか)

風(かぜ)そよぐ ならの小川(をがは)の 夕(ゆふ)暮(ぐ)れは みそぎぞ夏(なつ)の しるしなりける

読み

かぜそよぐ ならのおがわの ゆうぐれは みそぎぞなつの しるしなりける

歌番号
099
歌人(作者)
後鳥羽院
(ごとば いん)

人(ひと)もをし 人(ひと)もうらめし あぢきなく 世(よ)を思(おも)ふゆゑに 物(もの)思(おも)ふ身(み)は

読み

ひともおし ひともうらめし あじきなく よをおもうゆえに ものおもうみは

歌番号
100
歌人(作者)
順徳院
(じゅんとく いん)

ももしきや 古(ふる)き軒端(のきば)の しのぶにも なほあまりある 昔(むかし)なりけり

読み

ももしきや ふるきのきばの しのぶにも なおあまりある むかしなりけり